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マッカーシズム/赤狩り

1950年代のアメリカの共産主義あるいはその同調者に対する取り締まり運動。共和党員マッカーシーによって推進され、「赤狩り」があらゆる社会で猛威をふるった。

 1950年代初め、朝鮮戦争の時期のアメリカで、共和党の上院議員マッカーシーを中心とて行われた、反共産主義にもとづく政治活動、およびそれによって多数の政治家、役人、学者、言論人、芸術家、映画人などが親共産主義者として告発された動きのことを言う。政府内部ではニューディール時代からの民主党系の自由主義的な国務省のスタッフがその対象とされ、さらに学者が言論人にその告発が及んだ。マッカーシーの執拗な共産主義者の摘発は、「赤狩り」と言われ、トルーマンもそれを黙認、追及の手はマーシャル前国務長官にまでおよび、「マッカーシー旋風」が吹き荒れて国民の不安を駆り立てた。次のアイゼンハウアー大統領の時期にも続いたが、朝鮮戦争が終わり共産主義への脅威が後退するにつれて、マッカーシーの強引なやり方は反発を受けるようになり、54年にマッカーシーが解任され、ようやく沈静化した。しかし、その後も共産主義を排除するアメリカ社会の気風は永く続いている。

マッカーシー

 G.R.McCarthy アメリカの50年代の上院議員。冷戦さなかの1950年代はじめのアメリカで、マッカーシズムといわれる共産党活動あるいはその同調者を追及する運動を展開した政治家。ウィスコンシン州選出の上院議員で、冷戦下のアメリカでの共産主義思想の浸透を恐れ、その摘発と称して政府活動特別調査委員会を組織し、つぎつぎと告発を行った。しかし、その強硬な手段は次第に不信感を増殖させ、54年にその告発の根拠は無かったとして調査委員会委員長の地位を解任され、数年後にアル中で死亡した。

マッカーシズム以前の赤狩り

 マッカーシズムの嵐が吹きまくった1950年代はじめよりも前、大戦直後の冷戦の進行の中で、マスコミなどでも共産主義の脅威が宣伝され、いわゆる「赤狩り」が始まっていた。その結果、1945年には10万人近くの党員がいたアメリカ共産党は、10年間に4分の1の数に落ち込んだ。その活動の中心となったのは下院に設けられた非米活動委員会(HUAC)であった。これは1938年に設置され、共産主義やファシズムのアメリカ浸透を調査するものであったが、46年から共和党保守派の主導下に置かれ、民主党が共産主義を許容しているという攻撃が始まった。特にハリウッドの映画産業の中にソ連のプロパガンダが入り込んでいる、という告発が行われた。民主党のトルーマン政権も自己の疑惑を払うため積極的に共産主義の弾圧に動き、連邦公務員に「忠誠」審査を強行し、212人を解雇、2000人以上の辞職者を出した。FBIも共産主義の摘発に動き、50年に共産党員のローゼンバーグ夫妻をソ連のスパイとして告発し、真相究明されないまま夫妻は翌年死刑となった。この風潮の中で出てきたのがマッカーシーによる国務省内部の共産主義者を告発すると言う動きだった。<有賀夏紀『アメリカの20世紀』下 中公新書 2002 p.19>

Episode Good Night and Good Luck

 マッカーシズムの追及はマスコミにもおよび、反政府的な言動や、共産党に同調するような発言をした放送人も次々と会社を辞めさせられていった。そのような状況を言論の自由の危機であると感じた一人が、BBC放送の人気ニュースキャスター、エド=マローだった。彼はプロデューサーのフレッド=フレンドリーらのスタッフと組んでマッカーシー上院議員の調査法や追及の誤りと矛盾を番組で取り上げる。さまざまな圧力が彼らに加えられ、マッカーシー自身も反論する。このマスコミの言論の自由の危機と闘った一人の男を取り上げた映画が、2005年製作、ジョージ=クルーニーが監督主演した『Good Night and Good Luck』、この言葉はエド=マローが番組の最後にいつも言っていたことば。映画は当時のニュースフィルムを多用して、緊迫したドラマとなっている。バックに流れるダイアン=リーブスのジャズも50年代の雰囲気を盛り上げる、いい映画です。白黒93分。

マッカーシズムとハリウッド

 マッカーシズムの追求は映画産業の聖地ハリウッドにも及んだ。多くの映画人がそれに抵抗し、たとえばチャップリンはハリウッドを去った映画人も多かった。また映画人の中にはマッカーシズムに協力したと後に指弾された人もいる。メキシコ革命の農民指導者サパタを描いた『革命児サパタ』や、ジェームズ=ディーンのデビュー作『エデンの東』などで知られるエリア=カザンもその一人だった。
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ノートの参照
第16章2節 ウ.アメリカの繁栄と西欧・日本の復興
書籍案内

有賀夏紀
『アメリカの20世紀』下
2002 中公新書
DVD案内

ジョージ・クルーニー
監督・主演
『グッドナイトアンド
グッドラック』