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漢民族(漢族)

中国国民の中で最多数を占める民族。現在の中国は漢民族以外の少数民族を含んでいる。

 黄河流域と長江流域を中心に、中国にひろく居住し、文明を形成させた民族。語族の分類ではシナ・チベット語族に属する。現在の中国国民の約90%は漢民族(漢族)とされる。現在の中華人民共和国は多民族国家であり、漢族もそれを構成する一民族であり、他に55の少数民族から成り立っている。「漢」は古代中国に出現した最初の安定的な大帝国であった漢帝国に由来する。なお、「中国人=漢民族」ではないので注意を要する。
 彼らは主として黄河や長江の流域で農耕文明を形成したが、その直接的な先祖は新石器時代の周口店上洞人とされている。それ以前の旧石器時代の北京原人との関係はまだよくわかっていない。

“漢民族”の形成

 漢民族は広大な中国大陸に定住して農耕生活を営んでいたが、北方からの匈奴鮮卑モンゴルなどの遊牧民や、東北からの女真(後の満州人)などの狩猟民の侵攻をしばしば受け、同時に交易などでソグド人ウイグル人など中央アジアの人々との関係が続くとともにそれらの周辺民族とも混交を重ねていった。また、征服王朝の下では、漢民族以外の異民族が中国を支配した時代が長く続き、その間に異民族が漢文化に同化しつつ、漢民族も異民族の文化を受容し、現在の中国の「漢文化」をつくりあげてきた。ただし、元代の漢人は意味が違うので注意を要する。

現代の“漢民族”

 現在ではおおむね漢語を話し、漢文化を受容してている人びとを漢民族と言うことができる。また、清朝の異民族支配に対する反発から始まった辛亥革命の過程で、漢民族の民族意識が復活したが、中華民国及び中華人民共和国ともに清朝の支配領域を正統な国土として継承したため、多くの非漢民族を含むことになり、それら中国国民全体を指す場合には「中華民族」「中華人」という言い方がされている。また、「漢」には悪漢とか、無頼漢などいい意味で使われないことも多いので、中国人の自称として「華人」という言葉が使われることもある。なお戦前に使われていた、支那および支那人という言い方は、日本人による蔑称というニュアンスが強いので、現在では使用してはいけない。
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