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ダーダネルス海峡

アジアとヨーロッパの間、小アジアとバルカン半島の間の海峡で、エーゲ海とマルマラ海をむすぶ。さらにボスフォラス海峡を経て黒海につながる。

 エーゲ海からマルマラ海に抜け、さらに北に位置するボスフォラス海峡を通って黒海につながる。 ダーダネルス海峡の小アジア側には、やゝ南にいったところにトロイア遺跡があり、トロイア戦争の舞台となったところである。また第3次ペルシア戦争のでは、前480年にペルシア帝国のクセルクセス1世が自ら大軍を率いダーダネルス海峡を渡ってギリシアに侵攻した。20世紀の第一次世界大戦ではイギリス軍などが海峡に面したゲリボル(ガリポリ)半島に上陸したが、ガリポリの戦いでオスマン帝国軍に敗れた。このように、ダーダネルス海峡は古来、戦場となることが多かった。

ボスフォラス海峡

黒海からマルマラ海に通じる海峡。ボスポラスとも表記する。古来、アジアとヨーロッパの接点とされ、歴史的に重要。イスタンブルの市街に面し、現在は橋、トンネルでアジアとヨーロッパが結ばれている。

 黒海とマルマラ海を結ぶ海峡で、南北に細長く、全長約30km、幅は最も狭いところで698m。マルマラ海からダーダネルス海峡を経てエーゲ海に抜ける。
 古来アジアとヨーロッパの接点にあり、交通の要衝として重要視された。ギリシア人が植民してビザンティオンを建設し、後にはローマ帝国の都コンスタンティノープルとなり、さらに東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の都として繁栄した。また小アジアに起こったオスマン帝国はこの海峡を渡ってバルカン進出をはたし、アジアとヨーロッパにまたがる帝国を建設した。オスマン帝国は1453年にビザンツ帝国を滅ぼし、その後コンスタンティノープルはイスタンブルと呼ばれるようになった。

二海峡地図

ダーダネルス海峡・ボスフォラス海峡



ダーダネルス=ボスフォラス海峡(近代)

19~20世紀にかけて、ダーダネルスとボスフォラスの「両海峡」は、黒海から地中海進出をめざすロシアと、それを警戒するオスマン帝国およびヨーロッパ列強の間での海峡航行をめぐり紛争の舞台となった。この両海峡通航問題(海峡問題)は当時の最大の国際問題のひとつだった。

 イスタンブルがあるのはボスフォラス海峡。オスマン帝国(トルコ)の登場以来、その支配下に入っていたが、ロシアは黒海から地中海に進出するためにはダーダネルス=ボスフォラス両海峡の通行権を得なければならないので、オスマン帝国との間で激しい争いを展開、いわゆる東方問題の焦点となる。18世紀の初めのピョートル1世の時に北方戦争でバルト海に進出する一方、南下政策をとって、黒海からバルカン半島方面に進出しようとした。黒海を支配下におけば、黒海艦隊を地中海方面に進出させるためにはどうしても通過しなければならず、その航行権の獲得をめざしてオスマン帝国に対してさまざまな攻勢をかけた。それに対してオスマン帝国の抵抗と、ロシアの地中海への進出を警戒するイギリス、フランスなどの諸国とが、この二つの海峡の航行権を巡って激しく争った。その経過をまとめるとと次のようになる。

参考 海峡問題略年表

1774年
オスマン帝国、キュチュク=カイナルジャ条約でロシアに商船の通過を許可する。
1809年
列強の妥協により、すべての国の軍艦の航行禁止される。
1833年
オスマン帝国とロシアでウンキャル=スケレッシ条約締結。ロシア軍艦の航行を認め、他国の軍艦の航行は禁止。
1841年
ロンドン会議5国海峡協定締結。ウンキャル=スケレッシ条約を廃棄、各国軍艦の航行禁止、海峡封鎖。
1856年
クリミア戦争後のパリ条約で、黒海中立化、海峡封鎖の原則確認。
1878年
露土戦争後のベルリン会議で締結されたベルリン条約でも海峡封鎖の原則維持。
1914年
第一次世界大戦 オスマン帝国がドイツ側に参戦したので、イギリスはロシア軍との連絡を確保するため、15年4月、ダーダネルス海峡入口にガリポリ上陸作戦を敢行。しかしトルコ軍の抵抗で失敗。
1917年
10月、オスマン帝国が降伏。ダーダネルス=ボスフォラス海峡の封鎖は解除され、連合国の管理下におかれる。
1920年
第一次世界大戦後のセーヴル条約で、国際管理下に置かれることになる。実際には英、仏、伊、日、ギリシア、ブルガリア、ルーマニアからなる国際海峡委員会が運営する。トルコは各国の船舶、軍艦、航空機の通過の自由を認めた。
1923年
ローザンヌ条約でセーヴル条約の原則を継承。国際海峡委員会のもとで各国に開放されたが、沿岸部のトルコ主権は承認された。
1936年
モントルー会議。ソ連の提唱で開催され、モントルー条約が締結される。商船の自由航行は認められたが、黒海沿岸国以外の軍艦・航空機の通過は制限された。

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