帝国/世界帝国
多くの異なる民族、文明圏を包含する統一的支配圏を有した国家形態。西アジア世界のペルシア帝国、地中海世界のローマ帝国、東アジアを中心とした秦漢帝国と隋唐帝国などがその例である。中世以降も「帝国」を称する覇権国家が出現した。
多数の民族と異なる文明を包括的、統一的に支配する大国を「世界帝国」という。世界史上は、オリエント世界を統一したアッシリア帝国に始まり、アケメネス朝ペルシア帝国、アレクサンドロスの大帝国、ローマ帝国、中国の秦・漢帝国、隋・唐帝国がある。
世界史上の「世界帝国」という概念は、これらの古代帝国に対して限定的に使用されるが、「帝国」を称する国家はその後も現れる。ヨーロッパにおける神聖ローマ帝国や、ユーラシア大陸の東西に出現した、モンゴル帝国、ティムール帝国、オスマン帝国、ムガル帝国、中国とその周辺を支配した、明王朝や清王朝などであり、近代における大英帝国やナポレオンのフランス帝国、ドイツ帝国、ロシア帝国、さらに現代ヨーロッパにおけるナチスのドイツ第三帝国、アジアに領土を広げ大日本帝国と称した日本など、帝国主義諸国が出現した。また一般的には、かつてのソ連や現在のアメリカなど、世界的な覇権を争う覇権国家を「帝国」と称する。現在においては単に領土・領海の覇権だけではなく、経済や情報、文化操作などの側面での、国境を越えた「帝国」へのあり方へと変質している。
典型的な世界帝国は後のモンゴルから起こったモンゴル帝国であり、ユーラシア大陸をほぼ覆う、広範な地域と民族を統治した。これらの世界帝国の成立の背景には、広範囲な交易ルートの安全が保障されるという経済的な要請があったことも考えられる。
世界史上の「世界帝国」という概念は、これらの古代帝国に対して限定的に使用されるが、「帝国」を称する国家はその後も現れる。ヨーロッパにおける神聖ローマ帝国や、ユーラシア大陸の東西に出現した、モンゴル帝国、ティムール帝国、オスマン帝国、ムガル帝国、中国とその周辺を支配した、明王朝や清王朝などであり、近代における大英帝国やナポレオンのフランス帝国、ドイツ帝国、ロシア帝国、さらに現代ヨーロッパにおけるナチスのドイツ第三帝国、アジアに領土を広げ大日本帝国と称した日本など、帝国主義諸国が出現した。また一般的には、かつてのソ連や現在のアメリカなど、世界的な覇権を争う覇権国家を「帝国」と称する。現在においては単に領土・領海の覇権だけではなく、経済や情報、文化操作などの側面での、国境を越えた「帝国」へのあり方へと変質している。
中国の王朝の周辺諸民族支配
特に唐は、太宗が突厥を破った後、北方民族から天可汗の称号を贈られたことは、唐が農耕民の漢民族だけではなく北方遊牧民の世界をも支配する世界帝国となったことを示している。漢以降の中国の王朝による周辺諸国に対する支配には直接支配から間接支配まで、いくつかの段階的な違いがある。直接支配としては、朝鮮北部に対する楽浪郡やベトナム北部に対する交趾郡のように郡県制を施行したことがあげられ、間接支配には、中国の皇帝が各国の王位を認める形をとる冊封体制、あるいは都護府のように長官は中央から派遣するがその下の官僚には現地人を採用する羈縻政策があげられる。また奈良時代の日本の遣唐使のように使節を派遣する朝貢関係もあった。最も緩い結びつきとしては婚姻関係で結びつく唐と吐蕃(チベット)の関係のようなケースもあった。中国の王朝は、周辺諸国との力関係に従って、これらの諸関係を組み合わせながら、漢文化や儒教、仏教などの文化的に圧倒的な力を背景に、周辺諸国に対する世界帝国としての支配を行った。典型的な世界帝国は後のモンゴルから起こったモンゴル帝国であり、ユーラシア大陸をほぼ覆う、広範な地域と民族を統治した。これらの世界帝国の成立の背景には、広範囲な交易ルートの安全が保障されるという経済的な要請があったことも考えられる。
西欧の帝国概念
「帝国」は、英語の Empire の訳語で、ローマ皇帝(Imperator インペラトル)の統治する領域(Imperium)に由来する。「帝国」は中世ヨーロッパの神聖ローマ帝国や近世のドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国あるいはハプスブルク帝国などにも用いられ、また近代での大英帝国や現代での「帝国主義」時代の大日本帝国など、用例が多いが、世界史上の「世界帝国」は、古代の奴隷制社会を基盤とした専制君主の支配する、広範囲な異民族を統一的に支配する国家を限定的に使用する。参考 帝国の概念
参考図書にあげた、スティーヴン・ハウの『帝国』では、“ある程度まではっきりしたこと……およびその限界点”で、帝国の概念を次のようにまとめている。(引用)帝国とは、広大で、複合的で、複数のエスニック集団、もしくは複数の民族を内包する政治単位であって、征服によってつくられるのが普通であり、支配する中央と、従属し、ときとして地理的にひどく離れた周縁とに分かれる。1870年代以降のいわゆる帝国主義列強については次の各国の例を参照のこと。 → イギリスの帝国主義 フランスの帝国主義 アメリカ帝国主義 ロシアの帝国主義
帝国主義は、そのような巨大な政治単位をつくり、保持する行為なり姿勢を指すことに用いられるが、同時に、ひとつの国民なり国が、他を、それほど明確でも直接的でないもないかたちでコントロールないし支配する意味でも用いられる。……<スティーヴン・ハウ/見市雅俊訳『帝国』(一冊でわかるシリーズ)2003 岩波書店 p.44>
「帝国」の新たな捉え方
現代においては、アメリカ帝国主義や、ソ連の社会主義帝国などの意味合いで「帝国」と言う用語が使われていたが、冷戦終結後には新たな「帝国」概念が提起されている。2000年に発表された、アントニオ=ネグリ、マイケル=ハート共著の『帝国』では、アメリカ資本主導で進められるグローバリズムの潮流をあらたな「帝国」としてとらえ、それに抵抗する主体として「マルチチュード」という概念を提起し、注目を集めている。 → 冷戦終結後のアメリカ外交