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上海

アヘン戦争の講和条約である南京条約で1842年に新たに開港された港の一つ。イギリス、アメリカ、日本などの租界が置かれ、商業と貿易で発展、二〇世紀には中国最大の国際都市となった。

 中国の江蘇省、長江の河口近くにある貿易港。宋代に商業都市として形成され、市舶司がおこかれてから貿易港としての発展が始まった。清代の初め、康煕帝の時の1685年に4ヶ所の海外貿易の受け容れ港に海関が置かれ、江海関といわれた上海もその一つとされた。他には寧波、厦門(アモイ)、広州だった。しかし、1757年には、清朝は外国貿易を広州一港に限定したので、上海の貿易港としての機能は低下した。

南京条約で開港

 上海が貿易港として急速な発展をはじめるのは、アヘン戦争の敗戦後の1842年南京条約によって開港された港の一つされてからであった。そのころの上海は、長江河口に近い一小都市で、上海県城があったところにすぎなかった。イギリスはその年のうちに上陸し上海県を占領した。
租界の設置 1845年に上海土地章程が締結され、城内に隣接する周囲6キロほどの土地が、治外法権の認められる「租界」とされ、イギリス人が居住するようになった。この租界は、これ以降、中国官憲も立ち入ることが出来ない事実上のイギリス領として、その中国進出の重要な拠点となっていく。
 1850年太平天国の乱が勃発し、太平天国軍の南京進出に呼応して、1853年に上海でも小刀会という秘密結社が蜂起し、上海県を占領した。イギリス領事のオールコックは租界に外国人からなる自治政府を設け、行政機関として参事会を設け、関税を徴収し自治を行った。1860年には李秀成の率いる太平天国軍が江南地方に進出すると、その地の有力者はみな上海租界に逃げ込み、上海ではイギリス軍人ゴードンらが常勝軍を組織し、租界を拠点として太平天国軍と戦った。

Episode 高杉晋作の見た上海

 太平天国軍が迫り、騒然としていた1862年の上海を目の当たりにしたのが、幕末の長州藩士で、後に誰よりも早く倒幕の兵を挙げた高杉晋作であった。高杉は幕府が貿易の実情の調査のために上海に派遣した千歳丸(せんざいまる)に長州藩から選ばれて(というより、危険人物だったので江戸から遠ざけられてというのがあたっているようだが)乗り組んでいた。薩摩藩の五代才助(後の友厚)も水夫として乗り組んでいた。高杉は上海に1862(文久2)年5月から約2ヶ月滞在し、鎖国中の日本人としては最も早く、太平天国の乱の最中の上海を見、租界のイギリス人やアメリカ人と接触した。
 1862年5月6日、上海港に着いた高杉晋作は、その第一印象を『航海日録』に記している。「上海は外国船が停泊するもの常に三四百隻、その他軍艦十余隻という。支那人、外国人に使役されている。憐れ。わが国もついにこうならねばなるないのだろうか、そうならぬことを祈るばかり。」
 5月21日の記事では「この日は終日閑座、そこでつらつら上海の情況を観るに、支那人はことごとく外国人の使役である。英・仏人が街を歩くと、清人はみな傍らに道を譲る。実に上海の地は支那に属すというものの、英仏の属領といってもいい。」と観察している。
 また高杉の日記には、銃声・砲声が聞こえたことが何度か記され、5月10日の項には「黄昏、オランダ人が来て、長髪族が上海から三里の地に来ている。明朝は砲声が聞こえるだろう、という」とある。長髪族とは太平天国軍のことで、当時、上海西郊の虹橋付近まで迫っていた。しかし六月には天京が曽国藩の軍に攻められたため、天京を支援するため上海から引き上げている。
 このように高杉晋作は、上海の半植民地化の実態と太平天国の戦いを目の当たりにして、7月5日に長崎に向かった。長州に帰った高杉は翌63年に奇兵隊を組織し、1864年末に馬関で倒幕の兵を挙げ、1867年4月14日に大政奉還を見ることなく、29歳で没した。<丸山昇『上海物語』2004 講談社学術文庫(初版は1987)p.44-48 / 他に奈良本達也『高杉晋作』1965 中公新書を参照>

五・三○事件、上海クーデター、上海事変

 太平天国の乱の後、上海の重要性は増し、中国最大の貿易港として発展、また辛亥革命の際には革命派の拠点の一つとなり、後には1921年中国共産党結成大会も上海のフランス租界で開催されるなど、歴史の震源地の一つとなっていく。
 1925年には上海の在華紡工場でのストライキに端を発した大規模な反帝国主義運動である五・三○事件の舞台となり、1927年には蒋介石による共産党弾圧事件である上海クーデターも起こった。
 そのころから魯迅などの文学者が上海で活動し、新しい文学運動の拠点ともなったが、国民党政府からは激しい弾圧を受けた。また、満州事変の翌年の1932年1月には、日本軍が上海に戦火を拡大させ、上海事変が起こっている。
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丸山昇
『上海物語』
2004 講談社学術文庫