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第3章 東アジア世界の形成と発展

3 東アジア諸地域の自立化

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ア.東アジアの勢力交替 用語リストへ
(1)9世紀末~10世紀 唐末から五代の混乱 → 東アジアの諸政権がいっせいに交替
  北方:9世紀中頃 ウイグルがキルギスに滅ぼされる → トルコ系民族の西方移動
      → モンゴル高原南西部を本拠としたモンゴル系a 契丹 の台頭
      → 926年 b 渤海 の滅亡
  朝鮮:918年、新羅にかわりc 高麗 成立。d 王建 がe 開城 を都に建国。
      → 936年、半島を統一。
  雲南:937年、南詔にかわりからf 大理 建国。タイ人が建国。
  ベトナム:10世紀後半に中国の歴代王朝による支配が終わり、ベトナム人王朝が自立。
      → 1009年 g 大越国 の李朝が成立。

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(2)唐を中心とした東アジア文化圏の統合がゆるむ → 各地域の独自文化の形成
  高麗:国家による仏教の保護 → 仏教経典を集成し、a 高麗版大蔵経 を刊行。
      ▲金属活字が使用される。  独自のb 高麗青磁 がつくられる。
  日本:894年、c 遣唐使の廃止  → 仮名文字、大和絵などd 国風文化 が成立。
     10世紀 平将門の乱など起こる。律令政治の崩壊が進行し、荘園制の拡大。武士階級が成長する。
     11世紀 藤原氏による摂関政治。貴族文化の隆盛、『源氏物語』・『枕草子』などが創られる。
      ▲1019年 刀伊の入寇(女真の北九州侵入を撃退)
     11世紀末 院政に移行。 → 平家政権へ。平清盛、1167年太政大臣となる。
      → 平氏政権のもとで、盛んにe 日宋貿易 が行われる。
     12世紀末 f 鎌倉幕府 の成立。 → 貿易とともに、僧侶の往来も盛んになる。
      同じ頃、高麗でも武臣(軍人)の政権できる。
(3)中国独自の文化の発展と、アジアの民間貿易の展開。
  960年 a 宋 の成立 → 唐の国際的文化に替わり、中国独自の文化が強まる。
  ・中国を中心とした朝貢貿易が衰え、民間交易が活発化する。
  → 東南アジア・日本などとの銅銭、陶磁器などの貿易が行われる。b 日宋貿易 の展開。
  → c 広州 ・d 泉州 ・e 明州 (寧波)などの港が繁栄。
    唐代に続き、f 市舶司 が置かれ、海上貿易を管轄。

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イ.北方の諸勢力 用語リストへ
10~11世紀の中国周辺民族の動き
 契丹(キタイ)  遼河上流で半農半牧生活を送るモンゴル系民族。
・10世紀 ウイグルの衰退に乗じ有力となる。
 916年 a 耶律阿保機 (太祖)が内モンゴルの熱河地方を本拠に即位し建国。
 926年 東のb 渤海 を滅ぼし、さらにモンゴル高原を制圧。
 936年 後晋(五代の一つ)の建国に協力した代償として、c 燕雲十六州 を併合。
   = 河北・山西の北部(万里の長城の南側)。都を燕京(現北京)に置く。
 947年 後晋を滅ぼし、開封に入城し、国号をd 遼 に改める。
 → いったんは中国全土を支配したので中国風の王朝名とした。後に契丹に戻る。
B 遼(契丹)と宋の抗争
・960年 a 宋 が五代の混乱を統一。(後出)
  → 華北の混乱に乗じて、b 遼 が南下し、宋を脅かす。
 1004年 c 澶淵の盟  宋(真宗)が遼(聖宗)に和議を申し出る。
  = 宋を兄、遼を弟とし、宋が毎年d 銀10万両・絹20万匹 を遼に送ることを約束。
・統治形態:
  意義=北方民族として本拠地を保ちながら中国をも支配した最初のe 征服王朝 ※。
  特色 f 二重統治体制 をとる
   = 遊牧民族にはg 部族制 、漢人など農耕民にはh 州県制 を適用。官職は
     前者にもとづくi 北面官 と後者にもとづくj 南面官 を別に設ける。
・文化 :中国文化を吸収し仏教を保護。独自のk 契丹文字 を創作。
 920年、太祖が漢字をもとに大字、その子がウイグル文字をもとに小字を作らせる。
  → まだ完全に解読されていない。
契丹文字

 契丹文字  

説明:

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 タングート   チベット系。陝西・甘粛地方で遊牧生活を送る。
・近隣の吐蕃やウイグルを破り、独立。
 1038年 ▲a 李元昊 がb 大夏 を建国。=宋からはc 西夏 と呼ばれる。
    都は興慶。(黄河上流左岸、現在の寧夏回族自治区銀川市)
  → 黄河上流城のd 内陸(東西)貿易路 を支配。しばしば宋に侵入し圧迫。
・▲1044年 宋との慶暦の和約を結ぶ。
  → 宋が毎年、歳賜として銀や絹を贈る。
・文化:仏教が盛ん。漢字を基にして独自のe 西夏文字 を創作、多くの仏典を翻訳。
   a 李元昊 が制定した漢字をもとにした表意文字。ほとんど解読されている。
西夏文字

 西夏文字  

 女真  ツングース系 中国東北地方で半猟半農生活を営み、はじめ契丹に服属。女直ともいう。
・1115年 a 完顔阿骨打   (太祖)がb 金 を建国。都は上京会寧府。
 1125年 宋と結んでc 遼 を滅ぼす。
  → 遼の皇族d 耶律大石  は中央アジアに逃れ、e 西遼(カラ=キタイ) を建国。
 1126~27年 金が宋の都f 開封 を占領(靖康の変)。華北を支配する。
  → 宋王朝の一部が江南の臨安に逃れ、南宋を建国。(後出)
 1142年 南宋と和議。淮河を境に南北に並立し、盛んに交易も行われる。
 1153年、都を燕京(現在の北京)に遷す。郊外に、盧溝橋を建設。
・金の政治形態:遼と同じくg 二重統治体制 をとる。
 = 女真族にはh 猛安・謀克制 ※を維持、華北では宋の郡県制を継承。
 ※その意味=i  300戸を謀克、10謀克を猛安としする軍事・行政組織。 
・文化:j 女真文字  太祖が漢字と契丹文字をもとに大字を作成、
    さらに3代毅宗が小字を作成した。現在、ほぼ解読が進んでいる。(右図)
・北宋に続き、紙幣(交鈔)を発行。(後出)
・宗教 道教の一派、全真教が起こる。(後出)
女真文字

 女真文字  

  次第に漢文化に同化し、民族的にも混淆すすむ。モンゴルが台頭し、1234年に滅ぼされる。

12世紀のアジア ほぼ12世紀中ごろの、おおよその領域を示している。

12世紀のアジア
 金    2 南宋    3 高麗    4 西夏    5 吐蕃(チベット)    6 大理 
 西遼(カラ=キタイ)    8 ホラズム    9 セルジューク朝    10 ゴール朝    11 チョーラ朝 
12 パガン朝    13 アンコール朝    14 大越国(李朝)    15 チャンパー    16 シュリーヴィジャヤ 
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ウ.宋の統治 用語リストへ
 宋(北宋)の統一   五代の周の将軍だったa 趙匡胤 が960年に建国(太祖)。 
 都はb 開封  → 979年 次のc 太宗 が中国を統一。
・節度使(藩鎮)の勢力を抑え、d 文治主義 をとる。
  ▲中央では、門下省を廃止し中書省と併合し、中書門下省とする。
   軍事統制機関として枢密院を置き、皇帝直属軍=禁軍を管轄させた。
・e 科挙 の完成:州試省試に続き最終試験を皇帝が試問するf 殿試 とする。
      ▲また、秀才科・明経科を廃止し進士科に一本化する。

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  → 変化:g 唐時代の貴族にかわって、科挙出身の官僚が皇帝政治を支えるようになった。 
   儒学・詩文を学んで合格できるのは経済力のある新興地主層=h 形勢戸 の出身者であった。
   ▲科挙に合格して官僚となった戸を官戸といった。
・対外消極策=契丹(遼)・西夏との講和を進める。(上述)
 1004年 契丹(遼)との講和 =i 澶淵の盟  絹と銀を歳賜として贈る。(上述)
 1044年 西夏との講和 = 慶暦の和約 銀、絹、茶を贈る。(上述)
  → 防衛費の増大・官吏の増大 → 財政の窮乏。
 王安石の改革 
・ 1070年 a 神宗 が宰相にb 王安石 登用し、改革に当たらせる。
 c  財政難の解消と富国強兵  をめざし、d 新法 とよばれる改革を行う。
 青苗法 :貧農へ植え付け時に金銭や穀物を低利で貸し付け、収穫時に返済させる。
 均輸法 :各地の特産品を不足地で売却し物資流通の円滑化と物価安定をはかる。
 市易法 :中小商人への低利貸し付け。
 募役法 :徴税・治安などの役務の代わりに免役銭を徴収し、役務は希望者から募集。
 保甲法 :農閑期に農民に軍事訓練を行う。傭兵に変わる兵農一致策。
 保馬法 :馬を民間で飼育し、戦時に徴発する方法。
   → 地主・大商人、特権的な官僚が反発。
・税制 方田均税法の実施。
 党争 の継続  王安石の死後、その改革を支持するかしないかで党争が起きる。
・王安石の改革を支持する一派= a 新法党 
・反対派= b 旧法党 (保守派のc 司馬光 ら。地主層・塩商人などが支持)
  → 北宋末、各地に農民の反乱起こる。(後出)  
 南宋  1127~1276(79)年
・1126~27年 a 金 が開封を占領=b 靖康の変  
  → 上皇の徽宗・皇帝の欽宗を捕える。
・1127年 皇帝の弟のc 高宗 が江南に逃れd 南宋 を建てe 臨安 (現杭州)を都とする。
  → 和平派のf 秦檜 と主戦派のg 岳飛 が対立。和平派が権力握る。
・1142年 金と和議。h 淮河 を国境とし、金に臣下の礼をとり多額の銀と絹を送る。
1276年 開封がモンゴル軍に占領される。1279年に完全に滅亡。(後出)
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エ.宋代の社会 用語リストへ
A 首都a 開封 の繁栄:黄河と大運河の接点にあり、商業が発展。
  → 『東京夢華禄』『清明上河図』(張択端筆の絵)に描かれている。
補足: 首都の繁栄とその特色

B 宋代の商工業の発達
・a 草市 ・b 鎮 の発生:地方の城壁外の交通の要地に発生した、商業の盛んな場所。
 同業組合の結成:商人の組合=c 行    手工業者の組合=d 作 
 貨幣経済の発達:銅銭(宋銭)のほか、金銀も地金のまま用いられる。
  紙幣:手形として用いられた唐の飛銭に替わり、北宋で紙幣としてe 交子 が発行される。
     初め四川地方で使用   = 意義:f 世界最初の紙幣の発行とされる。 
  → 南宋ではg 会子 を発行。▲華北を支配した金は交鈔を発行(元に継承される)。
・地主の成長:貨幣経済の進展にともない富裕になった地主(形勢戸)は、荘園を拡大。
  → その土地をh 佃戸 (小作人)に耕作させる。佃戸制は明・清まで続く。
補足:その意味をめぐる見解のちがい
C a 江南の開発 
 中国経済の中心が、長安などの西北から、長江下流域のb 江蘇・浙江 及び福建に移る。
  c 囲田 :湿地に堤防を築き干拓。▲他に圩田、湖田が作られた。
  d 占城稲(チャンパー米) の普及:インドシナから伝えられた早稲種。二毛作・二期作が普及。
  → 江南の繁栄を示す言葉 e 蘇湖(江浙)熟すれば天下足る と言われた。
  = f 蘇州 (江蘇省)と湖州(浙江省)を中心とした長江下流の穀物生産が中国を支えた。
D 手工業の発達:a 陶磁器 、絹織物、漆器など生産の発達。
  → ▲b 景徳鎮 の官窯が始まる。
  → c 茶 ・絹の生産増加。▲宋はd 茶の専売制 をとる。茶馬貿易が盛んになる。
・▲宋代の社会
 北宋で、女性の纏足の習慣始まる。
 北宋末の混乱 宮廷の奢侈、重税などに対する不満からしばしば農民反乱が起きる。
  ▲1120~21年 方臘の乱 『水滸伝』の背景となった農民反乱。
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オ.宋代の文化 用語リストへ
・宋の文化の特徴
 1.a 唐の国際性は消え、中国文化の独自性が強まった。 
 2.b 担い手は従来の貴族ではなく士大夫たちであった。 
 3.c 受容範囲が広がり、庶民文化も興ってきた。 
・d 士大夫  とは、
 政治的にはe 科挙に合格した上級官僚 であり、
 経済的にはf 新興地主(形勢戸)出身 で、
 文化的にはg 儒学・詩文の教養を身につけた知識人(読書人) 
      である。
士大夫の生活

 士大夫  の生活

儒学の新展開
・a 宋学(朱子学) =北宋のb 周敦頤 に始まり南宋のc 朱熹(朱子)  が大成。
  宇宙観 太極(真理=理)と無極(材料=気)を一体としてとらえる。
  実践倫理(道徳)=d 大義名分論 :上下、君臣の関係の正しいあり方を説く。
  華夷の別=漢民族の文化を絶対化し、周辺民族を夷とする中華思想。
  四書『大学』『中庸』・『論語』・『孟子』)を重視。
・歴史書 司馬光のe 『資治通鑑』  大義名分を明らかにしようとした編年体の歴史書。
・編纂物 『太平御覧』太宗の命で李昉らが編纂。  『冊府元亀』真宗の命で編纂した史料集。
 陸九淵(陸象山) 人間の心性を重視。 → 明代の陽明学の源流となる。
宋代の文化
・文学:a 欧陽脩 、b 蘇軾 らの古文復興運動が盛んになる。→ 唐宋八大家
    一方で、白話(口語)による小説・雑劇が発達。
・絵画:宮廷画家によるc 院体画 :d 徽宗 皇帝の『鳩桃図』など
  士大夫によるe 文人画 :米芾、牧谿など。
・工芸:宋磁=f 白磁 ・g 青磁 などの磁器が発達。h 景徳鎮 の窯業始まる。
・庶民文化:小説・雑劇、音曲に合わせてうたうi 詞 が盛んになる。
宗教の展開
・仏教:a 禅宗 とb 浄土宗 の発展。漢訳『大蔵経』の刊行。
  → 日本への影響:禅寺での宋学の隆盛、鎌倉仏教の成立。
・道教:金でc 全真教 (儒・仏・道を調和させたもの)が起こる。王重陽が創始した。
   → 南宋では、従来の道教が、d 正一教 と言われるようになる。
新しい技術
・a 木版印刷  唐に始まり宋代に普及。
・b 活字印刷法 ・c 羅針盤 ・d 火薬 
   → イスラーム世界を通じヨーロッパに伝来。ルネサンスの三大発明につながる。
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この節の小見出し
ア.東アジアの勢力交替
イ.北方の諸勢力
ウ.宋の統一
エ.宋代の社会
オ.宋代の文化

目 次

序章 先史の世界

1章 オリエントと地中海世界

2章 アジア・アメリカの文明

3章 東アジア世界

4章 内陸アジア世界

5章 イスラーム世界

6章 ヨーロッパ世界の形成

7章 諸地域世界の交流

8章 アジア諸地域の繁栄

9章 近代ヨーロッパの成立

10章 ヨーロッパ主権国家体制

11章 欧米近代社会の形成

12章 欧米国民国家の形成

13章 アジア諸地域の動揺

14章 帝国主義と民族運動

15章 二つの世界大戦

16章 冷戦と第三世界の自立

17章 現代の世界